白幡啓 × スタイリスト・野口強
スペシャル対談
「 大人の女性が目指すべき
デニムスタイルとは 」
今年3月で、5周年を迎えたstyling/。
そんなアニバーサリーイヤーの特別企画として、
スタイリストの野口強氏がディレクションする
『マインデニム』とのスペシャルコラボが実現!
今回はその野口強氏をゲストにお招きして、
デニムに関するアレコレをファッショントーク。
まずはコラボレーションに至った
いきさつから対談がスタート。
白幡啓(※以下、S) : 今年、styling/が5周年を迎える記念として「特別なコラボアイテムを作りたい!
styling/でしかできない、すごくトンガったものを作りたい!」そう想った時、真っ先に思い浮かんだのが、強さん率いる『マインデニム』さんでした。まずエッジィなものをデニムという誰もが慣れ親しんでいる王道なもので表現したかったのが一つ。そしてそれを叶えるためには、そのベースに確かな裏付けが必要で、どうしても本格的なデニムブランドさんと組みたかったので。
野口強(※以下、N) :
ブランド創設5周年。そんなおめでたい節目に、声をかけてもらったのは光栄なことで、もちろん断る理由もないんだけど、ただ、我々のデニムは本物にこだわり、生地からオリジナルで作っているぶん、市場に出回っているものと比べたらどうしても値段が高くなってしまう。そこが一番に懸念される点ではあったんだけど「大丈夫です」との返答をもらったから「じゃあ、やりますか⁉︎」ということに。
S :
女性はある程度の年頃を迎えるとお腹や腰まわりの肉づきがよくなって(笑)、お尻も垂れ始めてきちゃうので、まずは“身体をきれいに魅せる”ことを大前提に考えました。ウエストは締め付けず、でも腰回りはスッキリさせ、お尻もステッチの入れかたで上がって見えるように工夫。そして今ドキ感を出す太めのシルエットを『マインデニム』さんが誇る高い縫製技術で立体的に、かつ脚が長く見えるよう仕上げていただきました。ドレスと同じく“穿くだけでパッと決まる”素敵なデニムを目指して。ジャケットは、以前『マインデニム』さんが出されていた形に少しアレンジを加え、ちょっとポンチョ風な見えかたに。一見とてもビッグに見えますが、さすがの素材感で身体になじみ、エッジィかと思いきや意外と女性らしさも♡
デニムブランドさんの作るものは説得力が違うな、と改めて思いました。
N :
でも正直なところ、一般的にはリーズナブルに買えるデニムもいっぱいあるし、女の人ってデニムそのものに対するこだわり、そこまで無いよね。
S : 鋭すぎるご指摘‼︎
確かに巷には“それなりのデニム”があふれていて、勢いで着こなせる若いうちはそれでOKかと。でも歳を重ねてくると、デニムって“ただただラクだから着てる”みたいに見えて、完全な日常着に陥りがち。デニムをおしゃれに見せることへのハードルが突然上がってしまうんです。そうなってくると、ますます信頼できる“本物のデニム”じゃないと!ってなってきて。ファッションアイテムとしてデニムをちゃんと穿きこなすためには、何を選んで、どう着こなしたらいいのか。大人の女性にとっては、それが大きな課題に。
N : 何か違和感を覚えるというのはさ、たぶん自分の感覚が昔のままで、そのイメージを自分の中に強く残しているからじゃない?
実際は難しくもなんともないのに、難しいと思い込んでるだけなんじゃないかな。大人の女性が古着の(LEVI‘S)501を穿いて、そこにちゃんとした靴を合わせて、さらっとシャツを着る。それだけで、すごく素敵だと思うけど⁉︎
もちろん、ビッチビチのスキニーにピンヒール履いてたら「疲れるからやめたほうがいいんじゃない?
そこはマルジェラの靴のほうがいいんじゃない?」って言うかもしれないけど(笑)。一番には“今の自分”をちゃんと把握すること。自分に合ったデニムさえ選んでおけば、あとはそこにちゃんとした靴を合わせるだけで“決まる”はず。
S :
強さんのスタイリングを見ると、確かにいつも靴が効いていて素敵だなって思います。そして強さんがデニムをスタイリングする時の女性像には、カジュアルやワイルドさの中にも必ず色気があって。
N : デニムってもともとワークウェアじゃない⁉︎
でも、時代の変化とともに女の人も日常的にデニムを穿くように。なんだけど、そこはやっぱりメンズっぽい見えかたじゃなく、女の人には女性らしくエレガントであってほしいんだよね。それは完全に自分の勝手な理想なんだけど、やっぱりどこかに色気があってほしいな、って。
S : 強さんから見て「この人、色気あるな」という大人の女性って?
N :
例えばパリコレに行ってもさ、会場にいるジャーナリストのおば様たち、色気あるなって思うよ。501的なメンズっぽいデニムを穿いていても、足元はきれいな靴で、脚を組んだ時にちょっとヌーディな足首がのぞいて……。またトップスで、首筋とかデコルテがさり気なく見えたりしたら、それだけで素敵。
S : 脚を組んだ時に見える足首なんて、やっぱり目の付けどころが違いますね(笑)。
N : それがカサっとしてたら台無しだけど(笑)。
S : きちんとケアが行き届いてることも=女性らしさの大切な条件ですね♡
N :
そういうちょっとしたことだと思うんだよね。あとはトップスに首の詰まったクルーネックを選ぶなら、ロングスリーブよりはノースリーブのほうがいい、とか。
S : なるほど。女性にとって肌はやっぱり武器になるってことですね。
N : そう思う。欧米諸国では年配の女性でも日焼けして、バシッと肩出してるじゃない⁉︎
日本人って“隠そう主義”だけど、外国人女性は年をとろうが、太ろうが、肌を出してくる。そっちのほうが断然いいなって思う。
S : 確かにそこは絶対的な違いが。
N : 開き直ってるほうがカッコいいよね、マインドとして。そのほうがポジティブ。あれ、なんでなの?
日本女性の“隠そう主義”は。
S : そのほうがモテるという概念があるんじゃないですか⁉︎
日本人男性って、肌をきちっと覆ってるような慎ましやかで可愛らしいタイプをもてはやす傾向にあって、肌を出すようなカッコいい女性を「素敵だね」って褒める男性は少ない。強さんみたいにグローバルな視点を持った男性がもっと増えれば、日本女子も変わると思うんですけど、どうだろう、これからもう少し変わっていきますかね。
N : 変わってほしかったけどね。ほら、渋谷109が元気だった頃って、そっちのほうが勢いあって、強かったじゃない⁉︎
でもまた戻っちゃったよね。モテ系というのか保守的な感じに。固定観念にとらわれず色々トライして楽しめばいいのに!
そうやって経験値を積んで、ふるいにかけながら自分に合ったものを選んでいくことで、その人のスタイルって作られていくものでしょ。一つのものしか知らなかったら、ふるいにもかけられない。
S : まさに、デニムがその最たるものですよね。色々試して、試して、その結果自分に似合うものがわかっていく。
N :
男はデニムかチノかウールのパンツしか選択肢が無いわけだけど、デニムを選ぶ時は同じストレートでもブランドによって微妙に違うから、それをひと通りトライして自分に一番合ったストレートがどれなのか選んでいく。でも、女の人ってそこまでの労力をかけないよね。スキニーもあれば、ストレートもワイドもあって、今回コラボしたようなものもあって、女の人こそチョイスがいっぱいあるのだから、もっと果敢にトライすべき。
S : 確かにそれだけたくさんのバリエーションがあっても、何年も同じデニムを穿き続けてる人は意外と多いかも。
N :
ベーシックなものは変わらない定番としてずっと同じでもいいと思うんだけど、他にもまだまだ似合うデニムがあるはずだからもったいない。デニムこそもっと貪欲に冒険してもいいんじゃない?って思う。デニムってそもそも構えるほどのものじゃないし、年齢で似合わなくなったとか言わず、気負わず楽しんでほしいよね。一度、距離を空けてしまうと、自分の目が慣れなくて苦手意識みたいなものが生まれちゃうんだろうけど、デニムが難しいなんてことは、決してないから。
S : デニムもその時その時の自分に合わせてアップデートしていかなきゃダメですね。
N :
そう、靴やバッグばかり買うんじゃなくてね(笑)。みんな豪華一点主義みたいなところがあるから、小物ばかりに頼ってデニムは昔のまま、みたいな。それはさ〜、昔のものを引っ張り出してきても似合わないよね。着る人自身がどんどん変化してるんだから。
S :
デニムって、その存在は普遍的であるけど、ちゃんとシーズンごとのトレンドを加味しつつ、その時その時の自分に合ったものを選ぶことが大切だということですね。男性目線のお話が聞けて、すごく勉強になりました。強さん、ありがとうございました♪